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研究を臨床へ(免疫細胞療法)

 樹状細胞とT細胞の臨床

小生は東京大学医科学研究所附属病院で樹状細胞ワクチン療法の臨床試験を行っていた山下直秀教授の下で内科研修医として研鑽しましたが、二十代で亡くなる白血病の方をみとったりと大変に悔しい思いをし、癌治療への思いはますます強くなっていきました。ちょうどこの頃、外科医出身の矢﨑雄一郎先生の旗揚げのもと、東京大学医科学研究所の樹状細胞ワクチンの培養技術を引き継いだベンチャー企業のテラ社が産声をあげました。その後テラ社は、大阪大学大学院医学系研究科の杉山治夫教授が開発されたWT1ペプチドの人工癌抗原の技術を取り入れて、樹状細胞ワクチンの効果をより高め、またこれまで必要とされていた手術検体がなくても患者様が樹状細胞ワクチン療法を受けられるように適用の拡大を実現していきました。

テラ社創業者 矢﨑雄一郎先生(企業家倶楽部 2015年6月号表紙より)

テラ社創業者 矢﨑雄一郎先生 (企業家倶楽部 2015年6月号表紙より)

小生はその後も内科診療に携わりながら、東京大学医科学研究所附属病院で長山人三博士(現帝京大学医学研究科病院教授)のご指導の下、臍帯血を用いてWT1特異的キラーT細胞の誘導に関する研究を行い、そして2015年にテラ社が技術提供する樹状細胞ワクチン療法を自由診療でご提供するセレンクリニック東京に就任しました。理研横浜研究所ではマウスを用いた実験で樹状細胞の臨床効果を検証していましたが、今度は癌の治療のために実際に患者様に樹状細胞を投与することとなり、これこそが正に小生の長年夢見てきた「癌の新しい治療を開発する」というライフワークであると直感し、初めて患者様に樹状細胞ワクチンの注射をさせて頂いた日は思いがこみ上げて後で涙が抑えられなくなったことをよく覚えています。

テラ社の樹状細胞ワクチン療法の提供患者数は当時本邦で10,000症例を突破し、セレンクリニック東京でも主治医の先生との連携の下で、手術や抗癌剤と併用する形で樹状細胞ワクチン療法が行われ、通常ならあり得ないような余命の延長や長期生存者となられた患者様を何例も目の当たりにしました。私共の臨床データを何もご存じない権威者から「私の治療が王道だ」と言われて一辺倒に根拠のない批判を浴びせられることも数多く経験して参りましたが、お示しできる症例のカルテも存在しており、セレンクリニックグループではセレンクリニック名古屋 小林正学院長を筆頭として既に論文も多数発表されておりますので、「百聞は一見に如かず」なのではないでしょうか。

標準治療に樹状細胞ワクチン療法を併用する形で多数の長期生存者を出し、セレンクリニック東京と緊密に連携をとって患者様を紹介して下さっていたある総合病院の外科の先生から、2016年に「樹状細胞ワクチン療法を併用した3名の消化器癌の患者様が予想外に経過が良好で長期生存者となっていて、学会で発表したいので免疫学的なデータをまとめてくれないか」と依頼を受け、小生がそれらの患者様のデータの調査を担当しました。このうち1名の方は白血球型(HLA)が異なるため検査が受けられなかったのですが、残る2名の方はHLAがA*24:02という型だったので検査結果が残されていました。小生は非常に驚いたのですが、このお二人とも「テトラマー染色」という検査でWT1に特異的なキラーTリンパ球が体の中で大量に増殖していたことが判明したのです。

 

末梢血キラーTリンパ球のWT1テトラマー染色_対照群

末梢血キラーTリンパ球のWT1テトラマー染色_対照群

末梢血キラーTリンパ球のWT1テトラマー染色_長期生存者群

末梢血キラーTリンパ球のWT1テトラマー染色_長期生存者群

 

この図は、上段が比較するための通常の方(対照といいます)のデータで、下段が消化器癌で標準療法に樹状細胞ワクチン療法を併用して長期生存者となられた患者様2名のデータです。これはフローサイトメトリーと呼ばれる検査で、キラーTリンパ球を「CD8」というものを目印にして蛍光色素で染色しています。一つ一つの点はキラーTリンパ球を示しています。実はこのキラーTリンパ球に「テトラマー」と呼ばれる試薬を反応させて、WT1という癌の抗原を覚えたものを区別することができるのです。上の方にくっきり出てきている細胞の集団(ポピュレーション)は、WT1に強く反応するキラーTリンパ球を示しているのです。対照のデータと比較すれば差が歴然としていますが、この長期生存者となられた患者様2名は、体内にWT1を標的として攻撃できるキラーTリンパ球が大量に誘導されたということが検査で証明されたのです。実は小生は長期生存者の方でこのような現象を他にも何例も認めてきました。

この結果は、免疫学者が見れば一目瞭然なのですが、「in vivo(生体内)」で樹状細胞ワクチンによってWT1特異的なキラーTリンパ球が誘導されたということを意味しています。すなわち、樹状細胞ワクチンによってWT1の抗原を持つ癌細胞への免疫が確実に体内に誘導されたことを示しているのです。

樹状細胞ワクチンによって体内に確実に癌に特異的なキラーTリンパ球を誘導できたことが証明され、しかもその方々が長期生存者となられているという事実。ここまで科学的に確固としたエビデンスが得られていて、それでもまだ“民間療法”などとの誹りを受けなければならないいわれはありません。我々は東京大学医科学研究所で臨床試験が行われた樹状細胞ワクチン療法の技術を受け継ぎ、更に発展すべく絶え間ない努力を続けております。米国をはじめ世界でも樹状細胞ワクチン療法を用いた複合免疫療法の臨床試験が盛んにおこなわれています。テラ社は本邦初の樹状細胞ワクチンの保険承認を目指して和歌山県立医科大学でランダム化比較臨床試験を行っています。

癌の抗原に関しては「オンコアンチゲン」「ネオアンチゲン」などの新技術が導入され、今後さらに樹状細胞ワクチンの効力が高められていくこととなると思われます。また免疫療法は効きやすい方と効きにくい方とがはっきり分かれてしまうという大きな問題がありますが、これについては「バイオマーカー」の開発であらかじめ免疫力の個体差を区別する方法が開発されることと思われます。

日本の免疫学の発展に誇りを持ち、標準療法のみで諦めない患者様とご一緒に歩み、ご理解頂ける標準療法の主治医の先生のご協力の下で、ご納得頂ける臨床成果を出し、更に効果のある複合免疫療法の開発とエビデンスの構築に弊院も少しでも寄与していきたいと強く願っております。

セレンクリニック東京で積んだ免疫療法の臨床経験を最大限に活かし、誠意と仁心をもってご対応し、アットホームで居心地のよい新しいクリニックで、スタッフ一同全力でお支えする所存です。是非一度ご相談下さい。

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