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免疫チェックポイント阻害薬

銘煌CITクリニック倫理審査委員会 承認2019年6月24日

 

免疫チェックポイント

当院では、樹状細胞ワクチンのTリンパ球活性化作用をさらに増強する働きをもつ「免疫チェックポイント阻害薬」について、ご相談に応じております。

詳しい説明は下記をご覧ください。

 


 

最近、がんの治療において「免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitor)と呼ばれる種類の一連の新薬が登場し、世界中で注目されています。“チェックポイント”というのは、英語で“検問所”という意味です。免疫細胞が活性化して、病原体やがん細胞と戦うことはもちろん大切なことなのですが、しかし免疫細胞がいつまでも活性化され過ぎていると、今度は逆に自分の体を傷つけてしまうようなことになるので、要所要所で設けられた“チェックポイント”で免疫細胞が暴走し過ぎないようにブレーキをかけて通常の状態に戻す必要があります。これは元来私たちの体に備わった、免疫のバランスを維持するための絶妙なメカニズムです。

ところががん細胞はこのメカニズムを逆手に取って、たくみにがん免疫から逃れて生き延びているのです。がん細胞が様々な手を使ってがん免疫の監視機構から逃避するメカニズムは「がん免疫編集(Cancer immunoediting)」と呼ばれ[参考文献1]、がん免疫療法の効果を弱めてしまう要因となるため、大きな問題となってきました。

チェックポイント(検問所)

チェックポイント(検問所)

「CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク4:Cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)という分子は、Tリンパ球が活性化された後にTリンパ球の表面に現れてくる受容体として、1987年にフランスのJean-François Brunet博士らによって発見されました[参考文献2]。この「CTLA-4」について調べたところ、Tリンパ球が活性化した後に、いつまでも過剰な活性化状態が続き過ぎないように、Tリンパ球にブレーキをかける“チェックポイント”の役割をする分子であることが分かりました。樹状細胞は初めにがん抗原をTリンパ球に教えてTリンパ球を活性化させるのですが、その一方で「CTLA-4」にぴったりと結合できる分子を自分の上に発現しており、Tリンパ球があまり活性化し過ぎないように、樹状細胞は後になってTリンパ球にブレーキをかけて攻撃する力を抑えてしまうのです。米国のJames Patrick Allison教授らは、このTリンパ球の「CTLA-4」に結合してブレーキを外してくれる抗体をがんのマウスに投与したところ、樹状細胞からの抑制がブロックされて、Tリンパ球が活性化状態を維持することができるようになり、がんが治療できるということを証明しました[参考文献3]。こうして、抗体でできた薬であるイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)が誕生し、Allison教授は2018年にノーベル賞を受賞しました。ヤーボイはこの他にも、「CTLA-4」を表面にたくさん発現していてがん免疫を抑えてしまう「抑制性Tリンパ球(Treg)」に打撃を与えるという作用もあり、これによってもがん免疫を上げる優れた効果があることが明らかになりました[参考文献4]。

一方、「PD-1(プログラム細胞死受容体1:Programmed Death-1)という分子は、Tリンパ球が活性化した後にTリンパ球の表面に現れてくる受容体として、日本の京都大学本庶佑教授らによって発見されました[参考文献5]。この「PD-1」について調べたところ、これもTリンパ球が活性化した後に、いつまでも過剰な活性化状態が続き過ぎないように、Tリンパ球にブレーキをかける“チェックポイント”の役割をする分子であることが分かりました。がん細胞は活性化したTリンパ球に攻撃されると、「PD-1」にぴったりと結合できる分子を自分の上に発現して、Tリンパ球が自分を攻撃できないようにしてしまいます。がん細胞がみずからを守る巧妙な戦略によって、活性化したTリンパ球がブレーキをかけられて攻撃する力を失ってしまうのです[参考文献6]。本庶教授らがこのTリンパ球の「PD-1」に結合してブレーキを外してくれる抗体を作製したところ、がん細胞からの抑制がブロックされて、Tリンパ球は活性化状態を取り戻して、またがん細胞を攻撃し続けることができるようになることが証明されました。こうして、抗体でできた薬であるニボルマブ(商品名:オブジーボ)が誕生し、本庶教授は2018年にノーベル賞を受賞しました。

免疫チェックポイント阻害薬ヤーボイ&オプジーボ

Tリンパ球のブレーキであるCTLA-4とPD-1をブロックするヤーボイとオプジーボ

 

このようにして、Tリンパ球にかかってしまったブレーキを外しがん免疫の活性を強く保ってくれるのが「免疫チェックポイント阻害薬」です。「免疫チェックポイント阻害薬」は、単に増殖している細胞を殺すという作用のみだったこれまでの抗がん剤とは全く違って、体の中の免疫の力によってがんを治すことができることを明確に示し、免疫療法の歴史を大きく転換させました。「免疫チェックポイント阻害薬」の登場は、世界に衝撃を与え、まさに免疫療法の新しい時代を切り拓く“ブレークスルー”となったのです

 

免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの方が抗がん剤ダカルバジンよりも全生存期間を延長したことを証明したCheckMate066試験

免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの方が抗がん剤ダカルバジンよりも全生存期間を延長したことを証明したCheckMate066試験

 


 

当院で行う樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞が「WT1」などのがん抗原を体の中でTリンパ球に教えて活性化させて、がん細胞に対するTリンパ球のがん免疫を誘導します。しかし、活性化したTリンパ球の表面に現れた「CTLA-4」に結合する分子を樹状細胞が持っていて、Tリンパ球が過剰に活性化し続けないように逆に抑制をかけてしまったり、活性化したTリンパ球の表面に現れた「PD-1」に結合する分子をがん細胞が出して、Tリンパ球の活性を失わせて攻撃から逃れてしまったりします。このことは、樹状細胞ワクチン療法によってせっかくアクセルがかかったがん免疫が弱まってしまうことにつながります。ここでヤーボイ・オブジーボを併用すれば、「CTLA-4」や「PD-1」に結合して、樹状細胞やがん細胞がTリンパ球の攻撃力を弱めてしまう作用をブロックしてくれて、Tリンパ球にかけられてしまったブレーキを外せることになります。つまり、樹状細胞はがん免疫に“アクセルをかけ”ヤーボイ・オブジーボはがん免疫の“ブレーキを外す”働きをすると言うことができます。Tリンパ球にかかってしまった抑制を取り除くことで、樹状細胞ワクチン療法によって誘導されたがん免疫が最大限に働くことができるようになると考えられます。

 ただし、ヤーボイ・オブジーボなどの「免疫チェックポイント阻害薬」は“諸刃の剣”でもあって、大変重い副作用もあります。「免疫チェックポイント阻害薬」は、Tリンパ球のブレーキを外す働きによって、Tリンパ球を活性化させ過ぎて暴走させてしまうことがあり、Tリンパ球ががんと戦うだけでなく、過剰な免疫力で自分の体まで傷つけてしまう、自己免疫の病態のような副作用が現れるリスクがありますこれまでの抗がん剤などではみられなかった「免疫チェックポイント阻害薬」のこのような独特の副作用は、「免疫関連有害事象(immune-related adverse event ; irAE)」呼ばれており、大変危険な副作用です。そのため、「免疫チェックポイント阻害薬」はがん治療に効果があるからといってただ安易に使えるようなお薬ではなく、「免疫関連有害事象」に厳重に注意しながら、非常に慎重に使う必要があるお薬なのです。当院では免疫チェックポイント阻害薬についてご相談をお受けしておりますが、標準療法を行って下さる主治医の先生のご理解とご承諾が頂けた場合のみに限り、緊密な診療連携をとって治療を行います。

 


 

なお、免疫チェックポイント阻害薬を用いた複合免疫療法についてさらに専門的に知りたい方は下記をご参照ください。

 

イピリムマブ(Ipilimumab)小野薬品工業株式会社Bristol-Myers Squibb株式会社(開発元であったMedarex株式会社を買収)によって開発されたCTLA-4分子に対する抗体医薬(ヒトIgG1型モノクローナル抗体)です。リンパ節において樹状細胞はTリンパ球のCTLA-4に結合するCD80/CD86という分子を介して活性化Tリンパ球(エフェクターTリンパ球)の抑制的調節を行いますが、イピリムマブはTリンパ球のCTLA-4分子に結合して樹状細胞のCD80/CD86分子との結合を遮断することによってTリンパ球が陥った抑制状態を解除し、Tリンパ球の活性化と増殖を再び促進して細胞傷害活性を増強させます。また、イピリムマブは、CTLA-4分子を高発現している抑制性Tリンパ球(Treg)の機能を低下させ、さらに「抗体依存性細胞障害作用(Antibody-dependent cellular cytotoxicity; ADCC)」を介して腫瘍浸潤マクロファージによるTreg細胞の貪食を誘導し、Treg細胞の数を減少させることによって腫瘍免疫反応を亢進させると考えられています。イピリムマブの商品名は“Your”+“Voyage”の頭文字をそれぞれ取って「ヤーボイ(Yervoy)」と命名されたとのことです。総数217人のStageⅢまたはⅣ悪性黒色腫患者様を対象としてイピリムマブの第Ⅱ相試験が行われ、0.3mg/kg投与群、3mg/kg投与群、10mg/kg投与群が1:1:1の人数比で比較され、導入療法フェーズではイピリムマブが3週間隔で4回投与され、維持療法フェーズではイピリムマブが3ヶ月に1回投与されました。2010年の報告では奏効率(Objective response rate; ORR =(CR+PR)÷患者総数×100%)[註: CRは完全奏功(Copmlete response)、PRは部分奏功(Partial response)の意]は0.3mg/kg投与で0%(95%信頼区間0.0~4.9%)、3mg/kg投与で4.2%(95%信頼区間 0.9~11.7%)、10mg/kg投与で11.1%(95%信頼区間 4.9~20.7%)でした[参考文献7]。

 

ニボルマブ(Nivolumab)小野薬品工業株式会社Bristol-Myers Squibb株式会社(開発元であったMedarex株式会社を買収)によって開発されたPD-1分子に対するヒト抗体医薬(IgG4型モノクローナル抗体)です。腫瘍微小環境(Tumor microenvironment)においてがん細胞はTリンパ球のPD-1に結合するPD-L1という分子を介して活性化Tリンパ球の機能を阻害し免疫逃避を行いますが、ニボルマブはTリンパ球のPD-1分子に結合して腫瘍細胞のPD-L1分子との結合を遮断することによってTリンパ球が陥った抑制状態を解除し、Tリンパ球の抗腫瘍効果を再び増強させます。ニボルマブの商品名は“Optimal”+“PD-1”+“Nivolumab”の頭文字をそれぞれ取って「オプジーボ(Opdivo)」と命名されたとのことです。大腸がん14例、悪性黒色腫10例、前立腺がん8例、非小細胞肺がん6例、腎細胞がん1例の総数39人の患者様を対象としてニボルマブの第Ⅰ相試験が行われ、大腸がん1例(3mg/kg, 5回投与)で完全奏功(Complete response; CR)、悪性黒色腫1例(10mg/kg, 11回投与)と腎細胞がん1例(10mg/kg, 3回投与)で部分奏功(Partial response; PR)が確認されたことが2010年に報告されました[参考文献8]。非小細胞肺がん122例、悪性黒色腫104例、腎細胞がん34例、大腸がん19例、前立腺がん17例の総数296人の患者様を対象としてニボルマブの第Ⅰ相試験が行われ、奏効率(ORR)は非小細胞肺がんで18%、悪性黒色腫で28%、腎細胞がんで27%であったことが2012年に報告されました[参考文献9]。一方で、ニボルマブは従来の殺細胞性抗がん剤や分子標的薬とは明確に異なる免疫作用機序を持つため、間質性肺疾患、甲状腺炎、下垂体炎、肝炎、白斑等の特徴的な「免疫関連有害事象(Immune-related adverse event; irAE)」が報告され、このうち特に間質性肺疾患については3人(患者総数の1%に相当)の死亡がみられ注意が喚起されました[参考文献9]。ニボルマブは種々の悪性腫瘍の中でも悪性黒色腫及び非小細胞肺がんに対する大規模臨床試験が先行して行われて2015年に入って相次いで報告がなされました。総数418人の悪性黒色腫患者様を対象としたニボルマブの第Ⅲ相試験であるCheckMate066試験では、抗がん剤のダカルバジン(Dacarbazine)を対照として全生存期間(Overall survival; OS)の中央値はダカルバジン群で10.8ヶ月、ニボルマブ群で未到達(長期生存のため計算不能)、1年全生存率(Overall survival rate; OSR)はダカルバジン群で42%、ニボルマブ群で73%であり、統計学的に有意な生存期間の延長がみられました(ハザード比0.42, P値<0.001)[参考文献10]。総数272人の扁平上皮非小細胞肺がん患者様を対象としたニボルマブの第Ⅲ相試験であるCheckMate017試験では、抗がん剤のドセタキセル(Docetaxel)を対照として全生存期間(OS)の中央値はドセタキセル群で6.0ヶ月、ニボルマブ群で9.2ヶ月、1年全生存率(OSR)はドセタキセル群で24%、ニボルマブ群で42%であり、統計学的に有意な生存期間の延長がみられました(ハザード比0.59, P値<0.001)[参考文献11]。総数582人の非扁平上皮非小細胞肺がん患者様を対象としたニボルマブの第Ⅲ相試験であるCheckMate057試験では、ドセタキセルを対照として全生存期間(OS)の中央値はドセタキセル群で9.4ヶ月、ニボルマブ群で12.2ヶ月、1年全生存率(OSR)はドセタキセル群で39%、ニボルマブ群で51%であり、統計学的に有意な生存期間の延長がみられました(ハザード比0.73, P値=0.002)[参考文献12]。これらの臨床試験等の結果に基づき、我が国ではまず悪性黒色腫及び非小細胞肺がんに対してニボルマブの使用が保険承認となりました。さらに2015年にはこの後ニボルマブの腎細胞がんに対する大規模臨床試験の報告もなされました。総数821人の腎細胞がん患者様を対象としたニボルマブの第Ⅲ相試験であるCheckMate025試験では、抗がん剤のエベロリムス(Everolimus)を対照として奏効率(ORR)はエベロリムス群で5%、ニボルマブ群で25%、全生存期間(OS)の中央値はエベロリムス群で19.6ヶ月、ニボルマブ群で25.0ヶ月であり、統計学的に有意な生存期間の延長がみられました(ハザード比0.73, P値=0.002)[参考文献13]。この後もさらに多種類のがんでニボルマブの抗がん剤に勝る有効性が報告されることが続いています。このように、ニボルマブ単に細胞を殺す抗がん剤と全く違うメカニズム本来生体に備わっているTリンパ球の抗腫瘍免疫を活性化させることによって悪性腫瘍を治癒に至らしめる可能性を秘めた、まさにがん免疫療法の歴史における画期的な薬といえるのです。

 

このように、イピリムマブニボルマブ同じ免疫チェックポイント阻害薬であっても異なるメカニズムを持っており、CTLA-4阻害薬イピリムマブ免疫応答の初期(プライミングフェーズ)にリンパ節でのTリンパ球活性化の増強を介して抗腫瘍免疫を高めると考えられ、PD-1阻害薬ニボルマブ免疫応答の晩期(エフェクターフェーズ)で腫瘍微小環境でのTリンパ球浸潤において抗腫瘍免疫を高めると考えられています[参考文献14]。イピリムマブニボルマブは互いに免疫抑制を解除する機能を補い合う関係にあるため、これらを併用した「二重免疫チェックポイント遮断(Dual immune checkpoint blockade)療法」が試みられてきました。総数945人の未治療切除不能メラノーマ患者様を対象とした第Ⅲ相臨床試験である CheckMate067試験では、PD-1阻害薬ニボルマブ単独群、CTLA-4阻害薬イピリムマブ単独群、二剤併用群が1:1:1の人数比で比較され、2017年の報告では最小追跡期間36ヶ月で全生存期間(OS)の中央値は、二剤併用群で未到達(長期生存のため計算不能)、ニボルマブ単独群で37.6ヶ月、イピリムマブ単独群で19.9ヶ月でした(二剤併用群対イピリムマブ単独群でハザード比0.55, P値<0.001;ニボルマブ単独群対イピリムマブ単独群でハザード比0.65, P値<0.001)。3年生存率は二剤併用群で58%、ニボルマブ単独群52%、イピリムマブ単独群34%でした。なお、二剤併用群対ニボルマブ単独群の差に関しては有意ではなかったものの、奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(Progression-free survival; PFS)全てについて、二剤併用群がニボルマブ単独群よりも改善する傾向が見られました。一方、Grade3または4の治療関連有害事象は、二剤併用群59%、ニボルマブ単独群21%、イピリムマブ単独群の28%でみられました[参考文献15]。このように、イピリムマブは単独使用よりもニボルマブとの併用効果が望まれるものと考えられましたが、一方で二剤併用とすると重篤な有害事象の倍増が認められ注意を要すると考えられました。また総数119人のDNAミスマッチ修復機構欠損(DNA mismatch repair–deficient; dMMR)または高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability–high; MSI-H)を有する転移性大腸がん患者様を対象とした第Ⅱ相臨床試験であるCheckMate142試験では、ニボルマブ(3mg/kg)およびイピリムマブ(1mg/kg)が3週間隔で4回投与された後、ニボルマブ(3mg/kg)が2週間隔で投与されました。2018年の報告では中央値13.4カ月の追跡調査において、奏効率(ORR)は55%でした。また奏効には持続性が認められ、データカットオフ時点で奏功が得られた患者の94%で奏効が持続中でした。1年全生存率(OSR)は85%、全生存期間(OS)の中央値は未到達(長期生存のため計算不能)でした。Grade3または4の治療関連有害事象が32%みられました[参考文献16]。また総数94人の放射線照射を受けていない脳転移(腫瘍径0.5~3cm)を有する転移性悪性黒色腫患者様を対象とした第Ⅱ相臨床試験であるCheckMate204試験では、ニボルマブ(1mg/kg)およびイピリムマブ(3mg/kg)が3週間隔で4回まで投与された後、ニボルマブ(3mg/kg)が2週間隔で投与されました。2018年の報告では頭蓋内における臨床的有用率(Clinical benefit rate; CBR =(CR+PR+6ヶ月以上持続のSD)÷患者総数×100%)は57%でした[註: SDは安定(Stable disease)の意]。Grade3または4の治療関連有害事象が55%みられ、中枢神経系を含む有害事象が7%含まれていた[参考文献17]。なお、総数1096人の未治療の中~高リスクの進行腎細胞がん患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験であるCheckMate214試験では、ニボルマブの二剤併用群と抗がん剤のスニチニブ群が1:1の人数比で比較され、前者はニボルマブ(3mg/kg)およびイピリムマブ(1mg/kg)が3週間隔で4回投与された後、ニボルマブ(3mg/kg)が2週間隔で投与され、後者はスニチニブ(50mg)が1日1回4週間にわたり投与された後、2週間休薬とするサイクルを継続しました。2018年の報告では追跡期間中央値25.2ヶ月で、18ヶ月全生存率(OSR)は二剤併用群75%、スニチニブ群60%でした。全生存期間(OS)の中央値は二剤併用群で未到達(長期生存のため計算不能)、スニチニブ群で26ヶ月でした(ハザード比0.63, P値<0.001)[参考文献18]。以上のように、ニボルマブとイピリムマブの二重免疫チェックポイント遮断療法は近年著しい成果によってエビデンスを蓄積しつつあります

 

WT1ペプチド等のがん抗原を提示させた樹状細胞ワクチンを投与することによってTリンパ球の“アクセルが踏まれ”抗腫瘍免疫活性が増強されますが、活性化したTリンパ球の表面にはその後CTLA-4分子が発現し、これが樹状細胞表面のCD80/CD86分子に結合することで、Tリンパ球は活性化状態を維持できずに抑制されます。また活性化したTリンパ球の表面にはPD-1分子も発現しますが、これが腫瘍細胞表面のPD-L1分子と結合することで、Tリンパ球の活性化状態が失われて攻撃不能となり、腫瘍細胞はTリンパ球の攻撃を逃れてしまいます。このように樹状細胞がTリンパ球の活性化の持続を妨げたり、腫瘍細胞が活性化Tリンパ球の攻撃を妨げたりすることによって生じるがんの免疫逃避機構に対して、免疫チェックポイント阻害剤であるイピリムマブ・ニボルマブを投与することによって、それぞれCTLA-4分子へのCD80/CD86分子の結合およびPD-1分子へのPD-L1分子の結合が阻害され、活性化を妨げていた抑制性シグナルが入らなくなってTリンパ球の“ブレーキが外され”、Tリンパ球の腫瘍細胞に対する攻撃能力が再び回復します。このように樹状細胞ワクチンとイピリムマブ・ニボルマブを合わせて使用することによって、がん細胞を攻撃するTリンパ球の“アクセルを踏み、ブレーキを外す”戦略は、免疫学的観点からも合理的であると考えられ、樹状細胞ワクチンとイピリムマブ・ニボルマブの併用療法への期待が高まっています。樹状細胞ワクチンCTLA-4PD-1の二重チェックポイント遮断の相乗効果によって、リンパ節でのプライミングフェーズにおけるTリンパ球の抗腫瘍活性化と増殖が促進され、腫瘍微小環境におけるエフェクターフェーズでの抗腫瘍T細胞の活性の維持と殺腫瘍効果の増強がもたらされるものと考えられます。既に米国では2015年からDuke大学メディカルセンターにて再発性の悪性神経膠腫、星細胞腫、神経膠芽腫の患者様に対して樹状細胞ワクチンとニボルマブの併用療法の第Ⅰ相臨床試験(ClinicalTrials.gov.ID:NCT02529072)が行われています[参考文献19]。また2016年に総数48人のStageⅢまたはⅣの転移性悪性黒色腫患者様を対象とし、樹状細胞ワクチン治療終了後にイピリムマブ(3mg/kg)を3週間隔で4回投与した臨床試験の後ろ向き研究がオランダのRadboud大学メディカルセンターから報告されています。無増悪生存期間(PFS)率は、樹状細胞ワクチン治療後にイピリムマブを投与された患者様は1年で35%、2年で35%、樹状細胞ワクチン治療のみ受けたStageⅣ患者様は1年で7%、2年で3%でした。Grade3の免疫関連有害事象が19%の患者様で認められ、イピリムマブに関連した死亡が1人(2%)ありました。StageⅢ患者様の樹状細胞ワクチン治療後ではイピリムマブに対する臨床反応の効果が認められましたが、StageⅣ患者様の樹状細胞ワクチン治療後ではその効果は非常に限定されました[参考文献20]。さらに米国では2018年からH. Lee Moffitt 癌センター・研究所にて再発小細胞肺がん患者様に対する樹状細胞ワクチンとイピリムマブ・ニボルマブの併用療法の臨床試験が行われています。アデノウイルスベクターでp53遺伝子を導入してp53ペプチドを抗原提示できるようにした樹状細胞ワクチン(Ad.p53-DC)[参考文献21]にイピリムマブとニボルマブを併用する複合免疫療法の第Ⅱ相臨床試験(ClinicalTrials.gov.ID:NCT03406715)が行われています。導入療法フェーズでは3週間を1サイクルとして各サイクルの1日目にイピリムマブとニボルマブが投与され4サイクルまで繰り返されます。サイクル1の1日目と15日目、サイクル2の8日目にAd.p53-DCが投与されます。その後は維持療法フェーズとなり、4週間を1サイクルとして各サイクルの1日目にニボルマブが投与され、Ad.p53-DCが4週間隔でさらに3回投与されます[参考文献22]。 このように、世界で既に樹状細胞ワクチン療法免疫チェックポイント阻害薬複合免疫療法(Combinatorial immunotherapy; CIT)の臨床試験が進められているのです。

 

 

<参考文献>

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