この雲南省の洞窟に住むキクガシラコウモリ由来の人工遺伝子改変SARSコロナウイルスが、武漢ウイルス研究所から漏れて世界に蔓延する以前は、当院にも外国から患者様がたくさん来て下さっていました。


今は外国との往来が途絶えて、国内の患者様のみとなっています。国内の患者様のために、樹状細胞ワクチン療法の治療費は公開しているよりも大幅に下げてご提供しています。
それで当院は経費を下げるために自分がほとんどなんでも一人でやっています。
弥生会計システムに複式簿記の入力をして決算書を作成するのも自分でやっています。固定資産の減価償却や固定資産税申告、長期前払費用償却、商品棚卸、切手等貯蔵品の管理、月末請求の買掛金・未払金処理、長期借入金の毎月の支払利息と元金返済の入力、前払家賃と光熱費の入力、毎月の経費精算、クレジットカード売掛金の入力、職員の源泉徴収税の算定や年末調整、税理士報酬等の支払調書の作成、賃金台帳と法定調書合計書の作成、確定労働保険の申告、消費税算定と中間納付…
税理士や社労士の先生の仕事だと思いますが、全部自分一人でやっています。税理士の先生からも、「こんなクライアントいません…」と驚かれました。自分でも、こんな医者いるのかなと思います…
赤字で売上が少なかろうと、経理の負担は変わらず膨大で、毎日ものすごい時間がとられてしまいます。確定申告用の青色申告の作成でまた徹夜でクリニック泊まり込みになりました。
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徹夜明けに、患者様が突然ご相談で訪ねてきて下さいました。当院は予約制なので全く準備をしておらず、身なりもきちんとしておらず、とても恥ずかしく思いましたが、当院のパンフレットと当院の記事を掲載して頂いた「統合医療でがんに克つ」(2011年9・11月号)をお渡ししました。お仕事もお忙しい中、消化器系がんの標準治療をお受けになられていますが、他の治療も試したいとお考えでした。
その日は、樹状細胞ワクチン療法を検討されている多発性骨髄腫の患者様の治療について、学術論文にあたって戦略を練っていました。血液がんでは「WT1」というがん抗原が大変有用で、大阪大学の杉山治夫先生は多発性骨髄腫に対する「WT1ペプチドワクチン」の臨床試験を行われて、その効果を報告されています。色々と調べると、さらに「サバイビン」というがん抗原が多く発現している多発性骨髄腫の患者様は予後が悪くなるという報告がたくさん出ていました。
それなら、「WT1」だけでなく「サバイビン」も樹状細胞に処理して抗原提示をさせて、骨髄腫(ミエローマ)細胞の攻撃目標にできないか…?患者様の白血球型(HLA)との適合性はどうか…?確実な治療効果が期待できるか…?
論文を調べていたらまた徹夜でクリニック泊まり込みになりました。
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次の日は、膵臓がんの患者様が久しぶりに樹状細胞ワクチンの追加投与を受けにきて下さいました。
主治医の先生の下で抗がん剤治療をお受けになりながら、初期に樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法もお受けになり、その後トモセラピーもお受けになられました。
最近、大腸の具合が悪くなられたとのことでとても心配になっていましたが、久しぶりにお会いしたらとても元気な笑顔をまた拝見できて本当に嬉しく思いました。
トモセラピーを照射することができない大腸の方に出ている病変が悪さをしているようですが、当院では十二指腸がんで樹状細胞ワクチンと活性化リンパ球療法が著効した香港の患者様のケースも経験しているので、なんとか樹状細胞が大腸の方の病変を縮小してくれることを願って、腋窩リンパ節と鼡径リンパ節の近傍に注射を行いました。
そして今度は、「認定再生医療等委員会」で審議を受けた、「再生医療等提供計画事項変更届書」と「再生医療等提供状況定期報告書」の関東信越厚生局への届出の手続きです。
当院は、樹状細胞(DC)ワクチン療法 [PC3180169/PC3190177]、ナチュラルキラー(NK)細胞療法 [PC3180252]、活性化リンパ球(LAK)療法 [PC3190186] の再生医療等提供計画を厚生労働省に登録して認可を受けているので、その事項変更や定期報告を提出しなければなりません。
ウェブサイトで書類を5件も入力していたら、さすがに1件間違えて、「認定再生医療等委員会」から頂いた「意見書」と「議事録」のファイルをアップロードすることを忘れたまま確定ボタンを押してしまい、修正ができなくなってしまいました…それで午前3時半に関東信越厚生局 健康福祉部医事課 再生医療等推進係様宛にメールを書いて、ウェブサイトの確定の解除をお願いしました…
連日、徹夜でクリニック泊まり込みになってしまいました。山のような仕事がどうしても終わらず家に帰れないのはいつものことなのですが…
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日がさす頃になって、大きな拡声器の声で目が覚めました。
「ロシアは~!! ウクライナから~!! 出~て~い~け~!!!」
当院は、東京タワーの近くで、ロシア大使館から数分の場所にあります。それで連日、ものすごい音量で演説や抗議のシュプレヒコールが行われています。
NATOの拡大とかネオナチとか、追い詰められたプーチン大統領にも色々な言い分はあるのだろうと思います。
しかしやはり誰がどう見ても、この現代の世界において、一独立国が侵略を受けて、生活をしていた大切な街が破壊されて、大量の人命が理不尽な殺戮によって失われていることは、許されることではないと思います。
日本では、阪神淡路大震災とか、東日本大震災の津波とか、天災によって街が破壊されて大量の人命が奪われる悲惨な経験をしました。
でも、人為的に発射されたミサイルでビルが破壊されて一瞬にして多数の人々が亡くなるというのはどう考えても許されることではないでしょう…
医療だけでなく本当に色々な仕事もして、クリニックを続け、患者様への責任を果たしていくつもりで、命を懸けてやっています。
でも、遠い地では、毎日何百人、何千人、何万人もの人が、戦争によって、死んだり、けがをしたり、故郷を追われて泣いたりしています。
大義名分のある戦争なら、人を何人殺してもいいのでしょうか?
ここまで戦争の歴史を繰り返しても、人間はまだ自らを変えられないことを悲しく思います。
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医学生の時に、解剖学の実習で、人間の脳を見ました。
こんな両手に載るほどの小さな脂の塊が、色んなことを考えたり記憶したり喜んだり悲しんだり欲望を満たしたりするのだなと不思議な気持ちがしました。

カラスに襲われて片翼を食べられてしまって一生飛べなくなってしまったムクドリのヒナを助けて一緒に住んでいたことがありますが、怒ったり喜んだりと感情はとても豊かで、本質は人間と同じだと思いました。
人間の脳はちっぽけなもので、所詮、動物の一種に過ぎず、争ったり憎しみ合ったりすることは、残念ながら本能として避けられない運命にあるのでしょう。

